ロバート・B・パーカー「スペンサー」シリーズのコンプリートに挑戦しています

[投稿日] 2022-04-02


10代から30代まで追いかけていたのに、いつの間にか読まなくなっていたのです。ロバート・B・パーカーの「スペンサー」シリーズ。

シリーズとしては40作(うち1作は未邦訳)、国内では1973年から2011年にわたって刊行された長寿シリーズです。
※この投稿での刊行年はすべて日本でのものです。

主人公の私立探偵・スペンサーほか登場人物は物語の進展とともに年齢を重ね、過去の事件に引きづられたり、彼ら自身の関係も変化したり……という、以前の一匹狼的なイメージのハードボイルドとは異なる人物像・群像が描かれ、「第三世代ハードボイルド」ともいわれていました。

パーカーにはほかのシリーズもあり、またレイモンド・チャンドラーの「フィリップ・マーロウもの」の未完の遺作を引き継いで完成させたり、オリジナルの「フィリップ・マーロウもの」も著しています。

当時のこのジャンルでは随一の多作さ・多彩さもあってか、シリーズに登場する権利がオークションにかけられたり、と本国アメリカでも人気を博していたようです。著者の急逝により途絶えたのが残念です。

悩み多き高校生(笑わないでね)だったころに出会ってハマる

1作目が刊行された1973年には私はまだ6歳で、もちろんそのころ読みはじめたわけではありません(それくらいからこういうの読む人もいるかもしれんけど)。

記憶しているかぎりでは高校生時分、7作目の『初秋』(1981年)を紹介した雑誌記事で知った、スペンサーにとって後に疑似的な息子となる少年・ポールに向けて彼が発した言葉に感銘を受けたことが最初の出会いでした。


「例えば、お父さんがまた自分を誘拐しようとするかもしれない、といったことについて考えるときは、彼が試みるかどうかについてあれこれ考えるよりは、彼が試みた場合にどうするのがいちばんいいか、ということを考える方がいいんだ」(同書)

自分ではどうにもできないことに「○○だったらどうしよう」と怯えるよりも、「○○だったらこうしよう」と自分にできる備えをした方がいい。

多感であった当時の私にはグッとキタ。てかいまでもグッとくる。

これをきっかけにまず『初秋』を読んでハマり、さかのぼって1作目から順に読みはじめました。

ちなみに『初秋』には俳優・高倉健さんが自らの主演で映画化を望んだという逸話があります。

それから新刊が出るたびに読み続けて30代まで。長い付き合いではありました。

まずは既読分を探索、読まなくなった時期を確認してみたら

とはいえ読まなくなって20年、どこまで読んだか曖昧だけど、ウェブで紹介されているあらすじで見当つければいいかな、好きな本の内容はけっこう覚えてるし、と余裕カマしてたんですが……

シリーズものゆえに主要な人物はだいたい同じ、探偵ものゆえ似たようなあらすじもあり。いきなり苦戦。

結局、本棚や箱に収めてある本の山を崩して現物を確認することに。まあ、いい加減な確認で買い漏らしたり重複したりするよりマシだし、今年の本の整理・売却にもつながったし(負け惜しみ



そんなこんなで28作目の『ポットショットの銃弾』までは読んでいたことを確認しました。

刊行は2001年でオレは34歳。次の『笑う未亡人』が2002年で35歳。

……借金生活ド真ん中だわ(´;ω;`)

ずーっと好きで追いかけてたシリーズを買う・読む気も失せてたんだな。そういえば千円もしない文庫本買うのもためらってたもんな。

妙なところで灰色の日々を思い出してしもうた。

このところいろんなことの見直しに取り組んだことを紹介していますが、このチャレンジも含めて、ようやく過去の苦しさを自分の中で相対化できる精神的・経済的な余裕ができたのということなのでしょう。

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月に1作ずつで年内コンプリート、20年ぶり・この年齢だからこその「再会」を楽しみたい

未読だった作品は未邦訳の37作目を除けば11作。2月から買いはじめ、月イチで続けて年内にコンプリートする計画です。

シリーズ全体がもはや新品は店頭在庫のみで重版の見込みもなく、大半は古書で揃えるしかありませんが、なんとかなるでしょう。

没後●年とか名著復活フェアとか新装版で……てのが出ないかなーと思いつつ、当時のもので揃えるのもまた一興。まとめて大人買いができないわけではありませんが、続刊を楽しみに待っていたころと同じく、順を追っていきたいと思います。

もちろん読むことも怠りません。普段の読書のほかに時間を設けて、月に1冊、ゆっくりと読んでいます。

ほぼノンアル生活をはじめたら寝る前に酔わずに過ごす時間ができたのもよかった。このシリーズは短い章の連なりで構成されているので、就寝前に2〜3章ずつ読み進めていくのもいい感じです。

読みはじめて早々、20年ぶりにスペンサーに「再会」した私はすっかり彼に近い年齢になっているんだな、と気づきました。出会ったころはポール少年の方が近かったのに、と思うと切ない心の疼きを覚えます。


私も作中のスペンサーと同じように、時おり過去を振り返りながら目の前の出来事に立ち向かっていくのでしょう。

ああ、ハードボイルドってこういうこと、なのかもしれません。