(たぶん)新潟以外ではあまり聞くことがない「はぐる」はどういうことばなのか

[投稿日] 2021-08-28

2020年の正月以来の帰省に行ってきました。

移動日ギリギリまで新潟の親族の健康状態やワクチン接種状況の確認を続け、私も2回の接種を済ませての敢行です。

それでも高齢者がいる自宅に長居は無用と親の顔を見て……お互いマスクしたままだったので「顔を」というのは違和感がありますが……近況を聞いて1時間足らずでお暇。

宿泊はホテル、親族との会食も3人で予約客のみ・3密回避のお店でマスク励行、20時には散会。1泊のみで翌朝は地元の散策もせず午前中に帰京という内容です。

それでもご批判があれば甘んじてお受けします。

そんな帰省でもお互い安心できましたし、やはり現地で聞くお国ことばは脳ミソの深いところに響く感じがします。

あ、これ方言だったの?

「はぐる」はどうやら方言ではない、大辞林に載ってるし

出落ち(´;ω;`)

どうせならこの機会にと調べたら大辞林に載ってました。ということは、新潟以外ではあまり使われないことばではあるものの、新潟弁ではないのだな(意味は後ほど)。

では新潟以外では「はぐる」行為はどう表現されているかというと「めくる」です。まあ、そうだろうな。

「はぐる」という動作は重なっているもの・覆っているものの主に表側・上側を端から持ち上げるように引き離していくことなので、やってることは確かに「めくる」と同じではあるのです。

「めくる」も使うよ、新潟民。でもなんか「はぐる」と違うんだよね……たぶん求めている結果が。感覚的には「どかす」「ずらす」に近いような気もする。



どんな場面で使うか思い浮かべると……

「ここにあったハガキ、どこいったろ?」
(ここにあったハガキ、どこにいった?)

「そこのチラシはぐってみた」
(そこにあるチラシをはぐってみな)

「ああ、あったわね」
(ああ、あったよ)

……とか。

「あれ? タマ(実家の猫/仮名)が見えねんだけど?」
(あれ? タマがどこにいるかわからないんだけど?)

「その布団はぐればいるがな」
(その布団をはぐるといるよ)

「おお、こんげとこいたんけ」
(おお、こんなところにいたのか)

……とか。ゴールが近づいてきた。

「シールをめくる」はめくったシールが主役。「シールをはぐる」ははぐって下にあるアタリ/ハズレを見る、みたいな感覚。

強いて絵にするとこう↓

そんなことをツラツラと考えておりまして、(話が前後しますが)じゃあネタにしよう、調べよう、と大辞林を紐解いたところ、まったくもってそのとおりの説明でありました。

はぐ・る(動ラ五)おおっている物を、一端を持ってはね上げ、下の物をあらわす。「掛け布団を−・る」「彼はぞんざいに頁を−・りながら/明暗 漱石」【可能】はぐれる(「スーパー大辞林」ver.3.0/三省堂編修所)

……漱石先生もお使いでしたか。


なぜほかの地方で耳にしないのか(私論)

思うに「はぐる」はいまでは古いことばであって、「めくる」や「どかす」「ずらす」に意味が分散していく中、農村・漁村由来の多世代・多人数の家族やコミュニティが多かったであろう新潟のような土地では受け継がれやすかったのかもしれません。

あるいは、これはまったくのこじつけですが、雪深い土地で雪の下になっているものを想いながらの雪かき(地元では「雪のけ」というとったが)の感覚が「はぐる」に結びついているのかな、と想像してみたり。

そういえば2021年の正月には久しぶりに新潟市内でも「幼稚園児の腰まで」(この尺度けっこう使う)くらいな積雪がありました……帰省して思う存分「雪のけ」したかったな。

せっかくなので新潟弁を少し

イマイチ煮え切らない結果ですね。腹いせにせっかくなので新潟弁をまた少し。

コロナ禍で帰省もままならぬ中、昨年の初夏のころに甥っ子夫婦に第一子が産まれるという嬉しいできごとがありました。私もこれで大叔父です。

正月は帰れないながらもお年玉をあげようと、母に電話で相談したときの会話です。人名はすべて仮名ですよ。



「お母さん、コウイチ(又甥)にお年玉くれるん?」
(お母さん、コウイチにお年玉あげるの?)

「くれるわけねーろ、まだあんげちっちぇがんに」
(あげるわけないでしょ、まだあんなに小さい子に)
※母はたいへんサバけた人物ですf^_^;)

「え? そういん? じゃオレどうしょばな」
(え? そうなの? じゃあオレどうしようかな)

「あんたはくれればいーわ、サトル(甥)が喜ぶろ」
(あんたはあげればいいじゃない、サトルが喜ぶでしょ)

「そらそらろもやー、ひいじいさんひいばあさんよかいっぺらのもな、ておもてんさ」
(そりゃそうだけどさー、ひいじいさん・ひいばあさんよりいっぱいなのもな、て思っててさ)

「そんげがん、こっちは滅多に会わね年寄りらんすけ気ぃつこうことねーれ。サトルも気にしねわね」
(そんなこと、こっちは滅多に会わない年寄りなんだから気を遣うことないよ。サトルも気にしないよ)

「うーん、そうらばそうしょばな」
(うーん、それならそうしようかな)

「どれぐれくれっか気になんらばミユキ(姉)に聞いてみればいいろ」
(どれくらいあげるか気になるならミユキに聞いてみたらいいでしょ)

「うん、電話してみっわ」
(うん、電話してみるよ)

「そうせばいいわ、わざわざありがとね」
(そうするといいよ、わざわざありがとう)

沸き上がる郷土愛(`・ω・´)

ちなみに今回の我が家用の帰省土産はホタルイカ・カキの加工品と生かんずりとお気に入りの地酒でした。



次の年末年始は窮屈な思いをせずに帰りたいけど。どんげらろ(どうなるかな)。