お酒を冷やで

[投稿日] 2016-06-03
[更新日] 2021-05-19

hiyazake
お店で「お酒を冷やで」が通じないことが多くなってきました。日本酒好き(私もです)にとってはおそらく目新しくはない話ではありますが。

もともと「冷や(常温)」と「燗(温める)」しか選択肢がなかった飲み方に「冷酒(冷やす)」が加わり、いつの間にか語感として「冷や」=「冷酒」と受け取られるようになってきた、ということなんでしょう。

お店の皆さんもね、きっと理解してるんだけど、「冷やで」に常温で出して「冷えてねぇぞ!」ていわれるより、「常温ですか」と聞き返したり、いっそ冷酒を出してちょっと「え?」て顔をされる方が楽だろうし。

確かにこっちも冷えてるのを期待してるところにヌルいのが出てくるより、常温だと思ったら冷えてる、て方がダメージ少ない気がします。

たまーに、「冷やでください」というと食い気味に「冷やしてません」て返してくる店員さんがいるのはちょっとアレなので、そこは少し頑張れ。

それにしても、日本酒を冷やして飲むようになったのはいつごろからなんだろう。子どものころを思い出しても、実家の冷蔵庫に日本酒が入っていた記憶がありません。季節を問わず、父が「冷やで」というと母が台所の隅から一升瓶を持ってきて、グラスやら茶碗やらに直接トットットッ、という感じ。カップ酒も台所のテーブルにそのまま置いてあったな。冷えてるとしたら土間や穴蔵に置いていある分、居間よりは涼しいか?という程度。

若いころに地酒ブームだかで冷やして飲むのが流行ったような覚えがありますが、ここまで冷酒が当たり前になったのはこの20年くらいではないでしょうか。

ん? 20年くらいというと、いま40歳くらいの皆さんにとって、お酒を飲む年齢になったときにはもう日本酒を冷やして飲むのがポピュラーになってたってことですね。そりゃことばの意味も変わるはず……なにやら自分の歳を感じる話になってしまったぞ。

まあでもね、冷やしたお酒もおいしいし、飲み方のバリエーションが増えて、日本酒を楽しむ人も多くなれば、それにこしたことはありません。蔵元さんが潤えばそれだけまたおいしいお酒・新しいお酒が飲めるわけで、酒飲みとしてはありがたい限りです。

とりあえず、飲むときはあまり目くじら立てずに。


錫の酒器、いいですね。それなりに値は張るけど価値はあります。贈り物にも喜ばれるし。

おまけ【あの人の50歳ころ】(敬称略)
高倉健(俳優、1931年生まれ):映画『駅 STATION』(1981年)主演。