禁煙の話

[投稿日] 2016-06-06
[更新日] 2021-05-19

kin_en
2005年8月、30代後半で煙草をやめました。学生のころから吸いはじめて、喫煙期間は18年。長いのか短いのか。

やめたからといって、煙草や喫煙者を毛嫌いする気持ちはありません。煙草をおいしいと思っていた感覚も覚えていますし、嗜好品として個々人が楽しむのは自由です。一方、禁煙・分煙エリアや路上喫煙に関することなど、ルールやマナーは厳しく守るべきだと思っています。

私が煙草をやめようと思った理由の1つは、体力の衰えを感じたことです。そもそも体に悪いものではあるわけで、このタイミングでやめないと弱る一方なのでは?と思いました。父が若いころから心臓病を発症していたので、私もそのリスクがあることを医師からいわれていたこともありました。

もう1つは、自分にとって喫煙から「嗜好品を楽しむ」という要素がまったく失われ、成分に依存する行為になっていることに気がついたからです。

やめる直前の喫煙本数は3日で2パック(40本)程度なので、ヘビースモーカーというほどではないでしょう。むしろ一定の時間間隔で規則正しく吸う、という状態です。起きているあいだ、自分の精神的・身体的コンディションに関わらず、時間がきたら席を立って喫煙所へ、という感じです。そして起床したらまず一服……やっぱり中毒ですな。

やめた月、量的にも質的にもかなりストレスフルな仕事を抱え、自宅に仕事を持ち帰って深夜まで、という日が続いていました。イライラすることも多く、喫煙本数が増えますが、まったくおいしいと思えません。むしろまずいと思いながらもやめられずに吸っていました。

その日もそんな風にまずい煙草を吸いながら自宅で仕事をしていました。そして深夜2時すぎに煙草を切らしました。朝から忙しくて買い忘れていたんですね。普段どおりなら買いに行ったでしょう。

しかしその夜は台風(だったと思いますが)で天候は大荒れ。しかもいつも煙草を買っていた自宅から2分ほどのコンビニは、前日から改装のため閉店しています。ほかに煙草を売っている一番近いコンビニまでは歩いて15分。吸い殻が積もった灰皿を見て、急に腹が立ちました。

俺、こんなまずいもののために、真夜中に、大雨の中、わざわざ出かけるの?

心の底から「行きたくねぇよ」と思いました。

こんなものに意識や行動を支配されてたのか、という馬鹿馬鹿しさすら感じました。漠然と「煙草、やめなきゃなー」と考え続けながらなにもしていなかったこともあり、「……このままやめよう」と決めました。すぐに吸い殻を捨て、灰皿を洗って片づけました。

翌日からは吸いたくなったらミントタブレットを食べたりガムを噛んだり、禁煙らしいことも多少はしましたが、あまり苦しくはありませんでした。かなり偶然に助けられた話ではあるものの、喫煙を続ける意味がないと思えたことと、「切らしたまま買いに行ってない」という感覚(いまだに)なのもよかったのかもしれません。1週間ほどで吸いたい気持ちはすっかりなくなりました。

余談ですが、ちょっと話題になっていたこの本、私、禁煙して1ヶ月くらいしてから「なんぼのもんじゃ?」と思って読みました。「……これ読んでから禁煙すりゃよかった」と思いました。たしかに読むだけでやめられる人はいるだろうな、という、いい内容だと思います。


体によくないものを、楽しい・おいしいと思えないのに吸っているのは、たぶん本人の意思ではなく依存です。思い当たる方は、その自覚がやめる手がかりになるかもしれません。

ちなみに、禁煙すると日中ものすごい眠気に襲われます。煙草の覚醒作用が途切れるからだそうです。人によるでしょうが、私は3日目から5日目まで、仕事中に落ちてデスクに頭突きをカマすレベルの眠気でした。居眠りすると命に関わる種類のお仕事をされている方は本当に注意してください。「明後日から夏休み」くらいのタイミングではじめるのがいいのかも。

なお、いまはまた当時とは違う「趣味」といえる形で煙草を楽しんでいます(電子じゃないよ)。その話もまた改めて。