社長(になるため)の勉強

[投稿日] 2018-07-22
[更新日] 2019-10-22


どうやら社長になるらしいです、私。

半年ほど前、いまメインで仕事をしている会社の社長から「経営を引き継いでほしい」という話がありました。

バレない程度に概要を。

ぶっちゃけ従業員は10人程度の小さい会社です。母体となった企業は同業の中でも歴史が古く、お付き合いが長く堅実な取り引きを続けている顧客がいくつかあり、いまでも収益の大半はそこから得ています。

母体の創業家が経営的にゴニョゴニョした折、ビジネスパートナーだった現社長の会社に助けを求め、立て直しを図って危機を回避、創業家は並行して経営していたほかの事業に専念する形で退き、いまに至ります。

この過程で私が母体の顧客を引き継いで収益を保つことに専念し、一方で現社長が経営状態の改善や新規事業の立ち上げを進める、という関係がここ数年続いていたのです。

ざっくりした言い方をすれば現状は「社内ベンチャーを立ち上げた老舗企業」みたいなもんですね。

経営は上向いたものの「新規事業」は苦戦が続き、それなりの規模の企業であれば不採算事業として中断していたかもしれません。それでも現社長の肝いりのプロジェクトでもあり、また「もはやこれまでか」というときに私も参戦して展開してみたら収益が得られる可能性が拓けた、という状態です。それもあってのオファーだと受け止めています。

さて、社長って、なにするんだっけ?

個人事業主としての事業運営や決算、金融機関との付き合いの経験はありますが、たぶんそれだけじゃダメだよね。

大企業のようにいわゆる「コース」を歩んで経験を積んで、じゃないし。さらに現社長はかなり剛腕タイプなもので、私はまったく真似できません。向こうも「それは望んでない、君のやり方でいい」といってますけれども。

同業で年齢や立場が近い経営者との交流もあるのですが、コアなところは自分で勉強するしかありません。こういうとき、一番堅実な方法はやっぱり読書だと思います。

そんなわけでここ半年ほど繰り返し読み込んだ本の中から、私なりのお勧めを記しておきます。



まずは2点。同じ著者のものです。140億円という巨大な負債を抱えた状態から自力再生し、その経験を活かして中小企業の経営者を救うべくコンサルタントになられたそうです。経験値パネぇよ。

『社長の基本』は売れているのでご存知の方・読まれた方もいらっしゃるかと。経営者としての考え方・振る舞い方や顧客・従業員との接し方、金融機関との付き合い方について、著者の経験を元に具体的でわかりやすい文章で書かれています。『あなたの会社のお金の残し方、回し方』はさらに金融機関との付き合い方と資金繰りについて深く掘り下げた内容です。

この2点がいいと思った理由は、金融制度も含めて「日本の中小企業の経営者」が置かれている現実に正面から向き合い、徹底的かつ実践的に「生き延びる道」を説いているところにあります。上向いたとはいえ難しい舵取りが続くであろう企業を継ぐ身として、腹を括る勇気をもらえた本です。

発行は『社長の〜』が後ですが、『社長の〜』を先に読んだ方が理解が深まると思います。

この2冊が「経営者として」だとしたら、「事業家として」という立場で役に立っているのが次の本です。


『大富豪の起業術』

ダイレクト出版さんという通販専門の出版社のものです。なので書店で目にすることはほぼないでしょう。タイトル(邦題)はなかなかエグいですが、「社長としてどうやって事業を進めていけばいいのか」についていまのところ一番の示唆を与えてくれている本です。

「起業術」とありますが、年商を元にした事業規模の段階ごとにトップは何を優先して事業を進めるべきか書かれており、0〜100万ドル(ほぼ1億円ですな)の段階についての記述がまさに「社内ベンチャーを立ち上げた老舗中小企業」にピッタリだったのです。

たとえば新規事業・新商品は思い入れの強さゆえに、時として外面をユニークに飾ることに気を取られて展開を誤ることがありますが(以下引用はすべて同書第1版より)……

事業を成り立たせるためにまず必要なのはコンピューターではない。オフィスや机でもない。顧客なのだ。(P.79)

競合他社にとって最善の場所はおそらくあなたの会社にとっても最善の場所となるはずだ。(P.122)

……耳が千切れんばかりに痛いですねf^_^;;;

もちろんこうした警句的な内容ばかりではありません。プロモーションや販売方法などについても事例を交えて詳細に説明されています。

タイトルのとおりこれから起業・独立する方や事業を継ぐ方だけでなく、大きな企業の管理職やプロジェクトリーダーとなる方にもお勧めできる本だと思います。

実際、この本を読んでから自分の考え方に自信が持てるようになりましたし、現経営陣と議論する中で意見・提案を求められることが格段に増えました。

ついでにもう1冊。


『忙しい社長のための「休む」技術』

これもダイレクト出版さんです。邦題のセンス、嫌いじゃないぜ。

50歳になってから、衰えを感じることが以前より多くなりまして。休息と仕事のバランスを見直さないと保たんな、と模索する中で出会った本です。こういうのがホントの働き方改革ではないかと。自分自身のことはもとより、社長になってからの従業員のマネージメントにも役に立つことと思います。

最後に。オファー直後で不安を抱えつつ、一緒に夕食を摂りながら「オレ、社長になるらしいよ」とパートナーに告げたとき、彼女は間髪入れずに「面白そうじゃん! やればいいじゃん! あ、でも、忙しくなっちゃうのかなぁ……でも、それでもいいと思うよ!」と笑顔でいってくれました。

ありがとう、カワイイやつめ(新手のノロケ