『失敗の本質』に思う

[投稿日] 2017-06-25
[更新日] 2019-10-22


しばらく前のこと、主な取引先企業での処遇が変わり、フリーランスの立場を保ちつつ取締役に就任することになりまして。

傭兵のまま参謀本部入り?みたいな。真田丸っぽくね?みたいな。

…………ごめんよ。

小さい組織ですし、フリーランスでありたいというこちらの意思を尊重してくれた部分もありますし、これまでのキャリア・お付き合いとしても断る理由はなく、オファーを受諾いたしました。あとはまあ、ちょっぴりでもギャランティに反映していただければf^_^;;

そんなこともあって「組織を率いる」ことを考えるようになり、以前から気にはしていた『失敗の本質』を読みました。批評なんて大それたことはいたしません、簡単に個人的な感想を。


組織のトップが読んでいる/読むべき本として挙げられることが多い本書ですが、実際に読んでみないとその意味がわかりません。この本の意義は読む前に想像していた「組織論」として秀でていることはもちろん、より大きくは「己を振り返る・戒める」視点を与えてくれるところにあると思います。

本書で徹底的に描き出される大日本帝国陸軍・海軍の「失敗」の惨憺たるありさまは、読んでいるうちに吐き気を催すほど(いやマジで)です。しかし同時にこの国は現代に至ってもまったく同じ問題を抱えたままであること、さらに日本人である自分自身もその「失敗」を犯すであろう精神性を持っていることを認めるしかなく、慄然としてしまうのです。

もちろん「組織論」として集団のあり方を探る指針にもなるでしょう。この本をテキストとした研究会を設けて組織改革を図る、なんてのも大いにアリでしょう。

でもね、一番大切なのは、トップに立つ者として、あるいは組織の一員として、悲惨な「失敗」……旧帝国軍においては貴重な資源の浪費であり、おびただしい数の人命が失われたことであり、国家の存立を危機へと陥れたことであり……へと組織を導いている危険はないか、と本書の分析を我がこととして自問する意識を持てるかどうかだと思う。

ついでに、より個人的な気持ちとして、吐き気を催すほどの徹底っぷりに「現代の日本に生きる者として、ここまでやらなければこの『失敗』の犠牲となった数多の御霊に顔向けできない」という執筆陣の気概(本書の「はしがき」の最後にも同様なことがサラリと書かれてる)が感じられて、より深く己を振り返るのでありました。

日本の夏は、まだまだそういう季節だ。